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その日は、雨が降っていました。
彼は一人の賓客を
マセラティ社製の2ドアクーペの助手席に乗せて、
銀座界隈を走っていました。
その日は、日本で「クアトロポルテ」という
マセラティ社の新型サルーンが発表になる日でした。
彼は、助手席に乗せた賓客を
発表の場となる会場へ
送り届ける役割を与えられておりました。
雨の中、和やかな空気でクルマを走らせる最中
その賓客は、会場へ向かう前に
娘の玩具を買いたいとリクエストしたので
彼は、銀座にある玩具屋へ寄りました。
小一時間ほどで、買い物を済ませて
いざ、会場へ向かおうとした時、
チェックランプが点灯し、
エンジン始動ができなくなりました。
そう、トラブルが起こりました
彼はとても焦りました。
なぜなら、彼はこのランプが点灯したケースで
その場での復帰は難しい事を知っていたのです。
次に彼は、バッテリーの端子の付け外しを行ってみたり
キルスイッチをON/OFFしてみたりと、
その場で出来る対処法をいくつか試してみました。
雨に濡れながらも、助手席に乗せた人物を待たせてはいけない
無事に届けなければいけない、という観念にとらわれ焦りました。
賓客は、慌てずに
ただ、助手席に座ったまま彼の行動を黙って見守っていました。
結局、原状復帰は無理だと判断して
代わりのクルマを手配し、雨に濡れた姿で
助手席に座る賓客に、こう言いました。
「 I'm sorry 」
すると、その賓客・・、当時のフェラーリ・マセラティの社長であった
ルカ・コルディーロ・ディ・モンテゼーモロは、
こう返しました。
「 No! 」
と、手を横に振って強く否定し
その手の平を自分の胸において
「 I'm sorry 」
と、彼に謝りました。
・・・私はこの話を聞いて
リーダーに必要な資質というものは
実に様々な要素があると思いました。
そんな感じで
めずらしく
いい話をしてみた。
であ、また